スラムでの自己防衛術、サンフランシスコ
内容
Hello
Chaoブラジル
長かったブラジルを発つ日。お世話になったCacoの一家にお礼を告げるとCacoの母が、「またいつでもいらっしゃい。うちのメイドが驚いていたわ」と言われた。どうやら僕が普段はメイドさんのする部屋の掃除やベッドメイキングをしていたことや、何よりもメイドさんに何かしてもらう度にお礼を言っていたことが感動的だったらしい。ブラジルはじめメイドを雇う習慣がある地域では、メイドには賃金を払っているのだから、お礼をいうものではないらしい。これも文化の違いだな、とつくづく感じた。
美味しい食事に、スリリングな体験をしたブラジルともお別れ。旅程はサンパウロ⇒ダラス⇒サンフランシスコ⇒日本。サンフランシスコには当時話題の中心にあったボンズのいるジャイアンツとそのお隣オークランドにあるマネーボールのシンボルであるアスレチックスという2つが本拠をかまえていることもあって3日ほど滞在することにしていた。
ダラスショックとSFでの再会
そんな野球について、乗り継ぎのダラスで個人的にショックな記事を目にして唖然とした。先週までボストンで見ていた僕のヒーローがカブスのユニフォームを来て新聞に…。にわかには信じれず、店員に
僕「ジョークだろ」とたずねると、
店員「それが現実さ」とあっさり、
ショックの連鎖。まだサンパウロの悪運ひきずっているような気分でサンフランシスコに到着。
はじめての西海岸、初夏、青空、空気が違う。そして、空港からの電車も超ハイテク。というよりボストンやニューヨークは鉄道や地下鉄も老朽化しすぎている。そんな生活になれてしまっているので、日本では普通くらいの電車、改札といったシステムを見ても感動できてしまうのだ。
この時代にはGoogleマップなど普及していないので、住所を元にききこみしながらホテルに到着。荷物をホテルの部屋に置くと、いざサンフランシスコの街へ。ホテルが市内からは少し離れていたこともあってバスで行くことに。ホテルのフロントでホテル近郊を走るバスの番号をきいて、帰りもそのバスに乗って戻ってこれることも確認した。
日中の市内観光は快適そのもの、カラッと晴れているが日本の蒸し暑さは皆無。青い海と空、まさに映画のワンシーンだわ。街を散策している最中に今夜ジャイアンツの試合があるという情報をゲットした。しかも相手はカブス!「おー、これも運命、我がヒーロー、ノマーにをまた見れるなんて。」。しかもカブスには日本でもお馴染みサミー・ソーサもいる。バリー・ボンズだけでも十分とおもっていたのだから、絶対に行かねば。夜を待ってスタジアムにいくことが決定。実はジャイアンツの本拠地はチケット無しでも見れる場所がある。スタンド下にスペースがあり、金網越しに無料で見れる。ただ、場所取りはお早めに。そんな運命めいた再開を果たしサンフランシスコ一日目にしては十分すぎる内容の満足な1日を過ごした。
と、ここまでは良かったんです!事件はまたもや夜にやってくる。
スラム式選択問題の解法
食事も終えて23時ごろに行きと同じ番号のバスに乗った。ホテル周辺の景色は覚えていたので、注意しながら乗っていたのだがその景色を見ることなく、行きに乗った時よりも長い時間が過ぎていることに気づく。行きが混んでいたのにおかしい。今ならmaps.meなどいくらでも地図アプリがあるけど、この時は紙の地図。運転手に確認に行くと。
運転手「もう過ぎてるよ」
僕「うそ、行きに見た景色出てこなかったよ」
運転手「あー、行きとは違う通りを通るんだよ」
えーーー、ありえん。ホテルのデスク、教えといてくれよ!何度も言わせてもらいます。地図アプリなんかないんよこの頃。
次のバス停で降りて戻らないと。もうバスないだろうから、歩くかタクシーだ。せっかく節約したのに結局タクシーか。でもバスを降りたらこんなこんなケチ臭いことをいっている自分が馬鹿馬鹿しく思える事態。
バス停から少し歩きだして気づいたのは、そこがどうも少し雰囲気の違うということ。先の方には数人がたむろしている。よくみると、そんな人々があちこちに。そうここまスラムなのだ。夜中のスラムに明らかにツーリストのアジア人。鴨が葱を背負ってきました状態。なんとかバスが通ってきた3ブロックほど先の大通りに出なければ。でも、先にいるたむろする集団をやり過ごす方法は。
1.普通に通る
2.地元民のフリをする
3.フレンドリーに振る舞ってやりすごす
そんないくつかの選択肢を考えていた、こんなツーリスト感満載の格好で地元民のふりなどありえない(笑)。そんな中で、”人はどんな人を敬遠するだろう”、と想像した。そして結論は、、、
“クレイジーなふりをする。”
うん、頭のおかしな人間がわめきながら歩いていたらさすがに向こうも近寄りたくないのではないか、と
そしていざ実践。あまりに描写したくないので、割愛するが、近所迷惑にならない程度の奇声を発しながら、映画や人生でみてきたクレイジーな人を演じてみた。
結果は、なんとか彼らの前を通り抜けれた、そして2ブロック歩いたあと、ダッシュで大通りへ。そこで右手にガソリンスタンドが見えた。アメリカのガソリンスタンドには大抵コンビニ的なショップがついており、そこも例にもれず。なんとかそこまでたどり着いて、タクシーが来るのを待って宿に戻ったときにはもう日付はかわっていた。天国と地獄を一気に味わった気がした。
ほんと今回もただただラッキーだったわけです。人によっては「俺の縄張りでわめきやがって、やかましい」ってやられる可能性も十分に考えれますから。
しかしながら、この防衛術があながち間違っていなかったのかも、と驚いたのはそれから何年もたってから、綾戸智恵さんがテレビでお話になっているのをみた時。実は綾戸さんもアメリカのスラムで危険な目にあったことがあるそうで、その際、気が振れた人間を装って難を逃れたのだという。
僕もそうだが、綾戸さんもそんな術を誰かに教わったわけではないのだろうが、窮地に立たされた時に客観的に考えると行き着くところは同じなのかもしれない。
こんな方法をおすすめするわけではないし、そもそもそんな場所に足を踏入れないことが大切ですよ。と注意喚起しておきますが、万が一、億が一にこういうシチュエーションに遭遇したら、自己責任でお試しください(笑)
To be continued.