途上国に教えられた先進国がゆえの発想の乏しさ
Bon Jour
内容
お手並み拝見といきましょう
翌日からプログラムが始まった。まずは講堂に集まってプログラムの説明やコーディネーター陣の自己紹介が行われた。参加者の面々をざっと見渡しただけでもかなりの国や地域からの参加者がいることが見てとれた。発表によると世界70ヵ国から総勢約100人くらいが選ばれてやって来ているとのこと。
プログラムの内容は毎日2ー3本の基調講演とグループワークがプログラムの柱で、その他に全体で行うワークショップ等が盛り込まれていた。朝から晩まで結構つまっているけれど内容だけみればごく普通の構成だった。留学時代も含めて学業やスポーツといった分野では世界的にも優秀といわれる人々を肌で感じてきた自負のあった僕は、この時点でもまだお手並み拝見くらいの上から目線だった。
その後グループ分けが行われた。僕のグループには米国、オランダ、イタリア、スウェーデン、ギリシャ、オーストラリア、スロバキア、ネパール、イラン、韓国、そして僕(日本)。多分各グループに地域や性別が満遍なく振り分けられていたんだと思う。
なんだかんだハマっていた僕
グループ分けから1時間ほどで始まったプログラムは基調講演に世界銀行の上席検事を招聘するなど豪華な顔ぶれ、その後のアウトドアアクティビティ等もただのスポーツではなく、自分達で新しいスポーツを考案する等興味深いものが多かった。僕にとっては各グループのコーディネーター達がアクティビティの中に織り込んでいるコーチング理論や手法という分野について体験できたのがまず大きな収穫だった。あんまり期待していなかったというか少しなめていたところがあったけれど、実際に始まると結構のめり込んでいた。
そんなプログラムの中において何よりも痛感させられたことは、自分がいかに世界の現状を知らないか、ということだった。留学して以降世界のニュース等にもある程度アンテナを張ってはいたので、今世界で何が起こっているのかそれなりに知っているつもりだった。だがマスメディアで取り上げられる問題というのがいかに対外的なプロパガンダが多いのか、ということまでは理解できていなかったのだ。
例えばイランという国は今でもそうだが、ニュースなどで知りうる限りはアラブ国家の一つであり、その中でも怖いとかネガティブなイメージを持つ人がほとんどだろう。多分国家=国民というイメージがあり、国民までもが怖い国というイメージが強いと思う。でも実際のところは国を牛耳っているアラブ人は少数派であり、国民の多数が抱いているアイデンティティーはペルシャ人。国民も政府を嫌う人が多いというのが実情。現に、アラブ諸国を旅した人がどこの国がよかったか、ときかれたときに返ってくる答えで多いのがイランだ。しかしマスメディア通して見えるのは政権と米国のいざこざ等だけで、外国人である僕達が国の実情を知ることはなかなかできない。
またネパールでは水の問題など様々な支援が必要だけれども、支援が行き届いていると報道されいる、メディアに映るのはごく一部であり、その裏で支援物資は高官などによって抜かれてしまっていたりもする。それを回避するためにいかに直接的支援が必要か等々、その当時の僕にとっては結構目からウロコな内容ばかり。
恵まれ過ぎがゆえの盲目
確かにどこの国でも国内に問題を抱えている。日本の福祉だって国会やテレビでは問題ばかり取り上げられているように見える。でもそんな悩みは途上国からすれば贅沢な悩みなんだろう。逆に途上国の抱える問題というのは、僕達が経験したことのないものでありどこに問題が隠れているのかということを想像すらできないものがあるという現実を思い知らされた。
そんなディスカッションを通じてのもうひとつの大きな気付きが、各国における富裕層のあり方の一端だ。多くの途上国では裕福であるということは良い教育を受けれるということ、そして受けた人間がそれを活かして自国をよくするためにどうすべきなのかということを真剣に考えているということを感じた。もちろん日本はじめ先進国で根付いている金持ちのボンボンというイメージのままの人もいるのだろうが、自分の置かれた恵まれた環境は国を変えるために、という考え方を持っている割合が多いのも事実だろう。そしてその根底にあるのはまさに愛国心だ。今はもうその影を見ることすら難しいけれど、それはきっと戦後の日本もそうだったんだろう…なんて思わされた。
結果、議題でこうしたテーマになった時にいかに恵まれた世界で育ってきた自分達がこういったテーマに疎く創造力に乏しいのかということを痛感させられた。グループワークの議論では各問題における地域ごとの現実がどうなのかを知るための質問に終始することで精一杯だった。なんかほんと軽い気持ちでやってきた自分が恥ずかしく申し訳ななかった。
学びと充実の完敗
留学していたときに感じたことのひとつとして海外の学生と日本の学生の間にある知識と思考力の違い(また改めて書きます)があったんだけれど、今回のプログラムには学歴関係なく、そのどちらも持ち合わせた本当のスマートさや情熱をもった若者が選考を突破して集まっていたわけでタジタジだった。本当に僕は同じ選考を抜けて来たのか疑わしい(-_-;)
僕の他にも日本からの参加者がおり、かなりの高学歴の方だったんだけれど同じことを感じたようだった。日本人は無意識のうちに学歴から抱く印象を重視してしまうところが強いことも再認識させられたのでした。
月並みだけれどもあっという間の4日間だった。本当に来れて良かったし空白の5年を抜けて前向きではなく前のめりに生きて行けるような気がした。今思えば、この時を境に生きているうちに世界のあらゆるものをこの目で見ておきたいと少しずつ思うようになっていた。
そしてこの後に今プログラム参加者宅に居候させていただくことにもなってゆくのである。ブラジル以降中断していた戦略的放浪家の世界のお宅拝見が本格的に再スタート!
次回から(多分)カナダ、モントリオール情報と街ブラ(自分的観光)です。
To be continued