灼熱の地へ!小さな町の少年カバン屋さん
アッサラーム
内容
ペトラからの生還
ペトラからアンマンに日も落ちた頃に帰ってきた僕達。帰りのバスで3時間爆睡していたものの、まだぐったりだった。バスを降りたところからタクシーで帰ればよいのだが、家の近所には食事をできる場所もないので、まずは歩いて夕食探し。しかしこれがすこし難航。入っていった通路が通り抜けできないとかで結構歩かされた。夜は気温が10℃代まで下がるとはいえ、猛暑の中10km以上歩いたあとだ。くわえて、どうやら僕は股ズレをおこしていて、歩くのがつらかった。あんまり皆さんピンと来ないかもしれないけれど、太もも60数センチになってくると、こういう過酷な環境では結構あるあるです。なのでズボンも僕にとっては消耗品。
なんとかシャワルマショップを見つけて胃に詰め込むと、タクシーをひろって帰宅。翌日は職場に出向かないといけないので、最後の気力でシャワーを浴びて泥のようにねむりました。
それは欠勤理由になりますか?
通常、4時くらいになりひびくアザーンの音にも気づかず7時過ぎまでぐっすり眠り、翌朝8時前に職場への向かえの車が到着、技術支援学校へ向かう。場所はアンマンから1時間強、ザルカを少し北へいったところにあった。もう少し北へ行ったらシリア国境。この当時ですらそこには難民キャンプが張られていて、僕の目には相当数の難民達が見えたが、今はどれくらいまで膨れあがっているのだろう。
車内にはアンマン在住の現地スタッフもいて、いろいろ面白い話をきかせてくれた。彼は敬虔なイスラム教徒で、朝一番のアザーンからお祈りをするらしいのだが、たまに一生懸命なになりすぎて、体調を崩して欠勤することがあるんだとか。他のスタッフも苦笑いしていたが、それが通じるってこれは文化の違いなんだろうか……(笑)
職業訓練校につくとMさんがスタッフに僕を紹介してくれた。女性スタッフが3名と男性スタッフが5名くらいいた。イスラム教の国でのマナーを一通り予習していたので、女性スタッフへの対応にはじめは緊張したけれど、ここのスタッフは西洋文化に馴染んでいる人が多かったので、はじめからわりと気さくに対応してくれて堅苦しさは感じなかった。2階建てで学校様式の建物内では女性向けの服飾関係のコースや、男性向けの車両整備などのコースが設けられていた。スタッフによるとまだまだ西洋ほどではないが、ここヨルダンでも女性の社会進出が進んできてるのだそうだ。
授業風景をとりたかったけれどアラブ諸国では宗教の関係上写真をとるのに非常に神経を使う。特に女性には基本的にカメラを向けてはいけない。新参ものの僕にはすこし荷が重かった。
アラブの商店街の特徴
この日は14時過ぎに授業が終わって、15時前には帰路に。スタッフ一人がザルカ近くの町に用があるということで、立ち寄ることになった。ザルカのアラブモスクを遠目にみながら、車は進み、アラブのローカル感を感じさせる町に到着。用を済ますのに1時間くらいかかるとのことだったので、僕は街ブラへ。
アラブの町の特徴は、同じ業種の店が同じエリアに隣同士にならんでいるところだ。客としては値段の比較や交渉が楽でいいけれど、店側はどうなんだろう、と思ってしまう。僕が迷い混んだのはベルトの店、小さな街で一人歩いているアジア人が珍しいんだろう。とにかく呼び止められる。そしてアラブのお決まり、まずコーヒーを。濃い~コーヒーに練乳を入れたコーヒー(僕は好き)を飲みながら商談なのだが、僕に関しては商談ではなく、出身、旅の理由など身辺調査のような質問がとんでくる。そんな質問が一段落すると、ベルトをすすめられる。はじめは1,500円、1,200円、帰ろうとすると600円と半額以下までおちたが、買わなかった。
だがそこでふと思い付いた。ベルト屋ならベルトの穴をあける機械があるのでは、と。歩きすぎて痩せたのかちょうどベルトの穴がもう足りなくなってきていたのでたずねてみると、あるとのこと。取り出されたのはハサミのような形状のもの。渡すとキレイに3つ穴をあけてくれた。お礼を渡そうとすると、「ノープロブレム、ブロ(ブラザー)」と言って受け取ってくれなかった。
800円の本物>2,000円のフェイク
そんなコーヒー&身辺調査のやり取りを他の店でも繰り返しているといい時間になったので集合場所に向かう。すると途中に鞄屋の前で中学生くらいの少年達に呼びとられる。
少年Aが僕の持っていた小型のNikeのショルダーポシェットを指差して
少年A「そのナイキの鞄は本物?」
僕「Nikeのアウトレットで買ったから本物のはずだよ」
少年A「こっちにきてよ」
そう言って僕を目の前の店舗に案内する。そこにはもう少し年上の少年Bがいて少年Aがなにか説明する。すると少年Bが
少年B「そのナイキのポシェットを譲ってくれない?ここにあるカバンと交換してよ」
棚にはフェイク品とおぼしき有名メーカーのロゴ入りのエナメルバックが並んでいた。
僕「それいくら?」
少年B「このナイキのは1900円(30cm×20cmくらい)でこっちのアアディダス(40cm×30cmくらい)は2,200円、、、etc.」
僕「それ本物?」
少年B「本物かはわからないけど、良いクオリティだよ。」
僕「悪いものではなさそうだけど、偽物買っても日本には持って帰れないんだよ。」
少年Bは続ける
少年B「買わなくていいんだよ、そのポシェットと交換、なんなら2つと交換でもいいよ。見て、君の持っているのよりもこっちの方が大きいし便利だよ。」
僕「大きいのは他に持っていて、この大きさが旅では便利だからこれ使ってるんだよ。そんなに本物が欲しいの?」
少年B「この辺では手に入らないから。」
僕「そうなんや。それならこれあげようか?」
少年B「いや、何もなしにはもらえない。交換ならいいけど。」
なんてしっかりした子なんだ。僕だったらあげるって言われたら即食いつきますが。さっきのベルト屋さんもそうなのだが、自分の生業にしているもの以外からの報酬は受け取らないということなのかな。少なくともこの街では一貫していた。
ここで彼はカバンについては諦めたようで、日本についての質問や、彼の知っている東アジアの知識について僕に話してきた。僕が日本のコインみせると興味津々でみており、欲しいかたずねると、それはほしいと言ったのでプレゼントした。
確かに途上国に行くと市場に売っている有名ブランドの商品はほぼ全部がフェイクといっても過言ではないだろう。でも彼らがここまで本物への憧れがあるという事実は意外だった。僕にとっては関空からの帰りにアウトレットでさらにバーゲン品になって1,000円にも満たないポーチがところ変われば憧れの的になるとは。またひとつ勉強になったし、僕らの生きている環境はこういった物質的な面では恵まれているんだと再認識した。
さあ次はアンマンを街ブラしよう。
To be continued.